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行き過ぎたハリウッド商業主義 スピルバーグ&ルーカスの“爆弾発言”で物議



 以前の本コラムで、世界の映画産業の中心地、ハリウッドを抱える米国では最近、早くも3D(立体)映画が飽きられ始めているというお話をご紹介しましたが、その中で、米国では映画館自体の数もどんどん減っているという状況もご説明させていただきました。

 AP通信が全米劇場主協会の調査結果を引用して報じたのですが、米国では1995年に7151館あった映画館が、2011年には約25%減の5331館に減っているというのです。

 デジタル化や3D化への設備投資ができず、泣く泣く廃業する映画館が増えていることと、自宅のホームシアターでDVDを楽しむ人の急増が原因なのですが、個人的には3D映画が飽きられ始めているということよりも、映画館の数が加速度的に減っているということの方が衝撃でした。実際、ここ数年、ハリウッドの業界関係者や知人らから「最近、若年層が映画館で映画を見なくなった」という嘆きの声をよく聞いていたからです。

 そして、こうした深刻な状況を受け、業界関係者どころか、ハリウッドを代表する超大物2人が最近「今のままではハリウッドの映画産業は内部崩壊する」と発言し、物議を醸しているのです。

 6月12日付米業界誌ハリウッド・リポーターをはじめ、翌13日付英紙ガーディアン、14日付フランス通信(AFP)、15日付米紙ウォールストリート・ジャーナル(いずれも電子版)など、欧米メディアが一斉に報じていますが、この“爆弾発言”を行ったのが、何とあのスティーブン・スピルバーグ監督(66)とジョージ・ルーカス監督(69)だったというから、穏やかではありません。

 「ジョーズ」(75年)や「インディ・ジョーンズ」のシリーズ(81年~2008年)といった娯楽大作だけでなく「シンドラーのリスト」(93年)や「ミュンヘン」(05年)のような重厚な社会派作品でハリウッドを牽引(けんいん)してきた大監督と、「スター・ウォーズ」のシリーズ(77年~05年)でハリウッドの映画産業そのものを大変革させたルーカス監督という、ハリウッドの代名詞のような要人が、まるで“自己否定”するような発言を行ったのですから、米のエンターテインメント業界は大騒ぎなのです。

 この“爆弾発言”は、ロサンゼルスにあるルーカス監督の母校、南カリフォルニア大学(USC)の映画芸術学部の新校舎設立記念イベントで飛び出しました。

 USCの映画芸術学部は、映画学など映画に関する事柄を包括的に指導する全米最古の学部で知られ、ルーカス監督のほか、「アポロ13」(95年)のロン・ハワード監督(59)や「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズ(85年~90年)のロバート・ゼメキス監督(61)、「遊星からの物体X」(82年)のジョン・カーペンター監督(65)ら、ハリウッドを支える大監督や映画人を数多く輩出していることで世界的に知られています。

 2人はそのイベントに、米経済ニュース専門局CNBCの人気女性キャスター、ジュリア・ブーアステインさん、米大手ネット企業、マイクロソフト社の双方向エンターテインメントビジネス部門の責任者、ドン・マトリック氏とともに登場しました。

 2人はまず会場を埋めたUSCの学生たちに「(ハリウッドの)映画業界がいま、かつてない大変革期を迎えていることをわれわれは悟った」と明言。

 続いてスピルバーグ監督が「私が映画を製作し始めた頃は…」と話し始め「私の作品群は、(米の)映画館で1年間上映されていたんですよ。『E.T.』(82年)は1年4カ月間も上映されていたんです。(今から考えると)驚くべき状況でしたよ」と振り返り、いかにハリウッドのビジネス手法が変貌したかを訴えました。

 そして「(ハリウッドの映画会社は)小粒でも個性的で深みがある作品より、話題や注目を集めやすい(安直な)娯楽大作に2億5000万ドル(約242億5000万円)の製作費を投じることを重視している」と指摘、商業主義に走りすぎる姿勢を批判しました。実際、いまのハリウッドでは、同性愛が題材の作品などは金融機関やファンドなどから融資が受けにくいといいます。

 さらに「今のハリウッドは若い作り手たちの(斬新な)アイデアを亜流扱いしている。これは大変危険なことだ。(そのせいで)いずれ内部崩壊か大きなメルトダウンが起きるはずだ。3作か4作、あるいは6作ほどの娯楽大作が立て続けに商業的大失敗を記録し、大きなパラダイムシフトが起きるはずだ」と訴えました。

 そのうえで、将来は、巨額の製作費をかけた大作と小規模の作品では入場料が異なるようになると予想。「『アイアンマン』のような大作には25ドル(約2400円)、(私が手がけた)『リンカーン』のような(小・中規模の)作品だと7ドル(約660円)というような状況が起こるだろう」と明言しました。

 一方、ルーカス監督も「映画よりいまはケーブルテレビ(のドラマ)の方がはるかに冒険的だ」と話し、ハリウッドが極度の大作重視に傾いた結果、没個性に陥ったとの考えを強調。

 続けて「これから映画館の数は激減し、生き残れるのは多くの魅力を持つ大規模な映画館だけになる」と明言するとともに「(爆発的に普及する)ホームシアターと差別化を図るためにも、映画ビジネスは高級路線を取らざるを得なくなり、映画鑑賞という行為が高級化する。映画のチケット代金は50ドル~100ドル(約4700円~約9500円)、あるいは150ドル(約1万4000円)に値上がりし、ニューヨークのブロードウェー・ミュージカルやアメリカン・フットボールの試合を楽しむような感じになるだろう。そして、ブロードウェー・ミュージカルと同じように、同じ映画が1年を通じて公開されるようになる」と衝撃的な予想を披露しました。

 何だかお先真っ暗な話ですが、2人の予言は多分、的中すると思います。ルーカス監督は記者がロサンゼルス勤務時代の2005年にも、サンフランシスコで開かれたある業界人向けの会合で「これからの映画はDVDの爆発的な普及を受け、自宅のテレビで鑑賞する人々のニーズに答えるため、映画館のスクリーンではなくテレビやパソコンのような小画面で鑑賞されることを想定した作品作りにシフトする」と発言し、物議を醸しました。そして現在、状況はそうなっています。映画を映画館の大画面で見る必然性がどんどん失われています。

 さらにガーディアンはこの2人の爆弾発言に加え、米誌ニューヨーク・マガジンが今年1月、「トラフィック」(2000年)や「エリン・ブロコビッチ」(2000年)で知られるスティーブン・ソダーバーグ監督(50)に行った長尺のインタビューにも触れ、「とりわけここ5年間の(ハリウッドの)映画製作の状況の悪化ぶりは最悪と言っていい。監督の扱われ方がどれほど酷くなったことか。金を持っているやつらが屁みたいなことを決めるという恐ろしい状況になってる。やらかしているのはハリウッドの映画会社じゃない。映画の製作費などの資金を調達しているヤツらだよ」とのソダーバーグ監督の強力発言も紹介しています。

 3人の発言を要約すれば「金融機関や出資者、ファンドといった資金提供者の言いなりになって、天文学的規模の製作費を湯水の如く投入し、若手のトンがったアイデアは頭から全否定して、アホみたいな娯楽大作ばっかり作ってるハリウッドからは個性が光る渋い作品がすっかり消えた。そりゃ映画館に行く人も減って、映画館の廃業も増えるでしょうよ」ということになるでしょうか。

 個人的には、スピルバーグ監督が予言する「パラダイムシフト」がハリウッドでいつ、どんな形で起きるのか興味津々です。(岡田敏一)

 【プロフィル】岡田敏一(おかだ・としかず) 1988年入社。社会部、経済部、京都総局、ロサンゼルス支局長、東京文化部などを経て現在、編集企画室SANKEI EXPRESS(サンケイエクスプレス)担当。ロック音楽とハリウッド映画の専門家。京都市在住。

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